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二十歳のきみへ。

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三連休の最終日。
街に出たら、晴れ着のお嬢さんと、
スーツ姿がカパカパ、どこか借り着のような青年たちが街にあふれていて、
今日が成人の日だってことを思い出しました。

晴れ着をまとって、同級生同士、久々の再会を楽しんでいる風な
グループの脇を通りながら、自分の成人の日を思い出した。

あーーーー。

もしかしたら、あの時の私と同じような思いをしている、二十歳の誰かがどこかにいて
何かのきっかけでこの記事を読んだりすることが、万に一つくらいはあるのかも?
と勝手に仮定し、ここからを書きます。



振袖とふわふわの襟巻き。

二十歳の頃、私は関西で私立芸術系の大学に通う学生でした。
大学進学を決めた時、今思うと、親はだいぶ困っていたのだと思います。
授業料が格段に高い学校だったから。
18歳の私は、自分の家族内における「その重み」がよくわかっていなくて、
頑張って試験に合格さえすれば(アルバイトして贅沢しなければ)
なんとか行かせてもらえるもの、と思っていたような気がします。

実家は無理して、数年前に家を新築したばかりでした。
父も母も私に困った顔をしながら、その進学を認めてくれた。

実家を離れて送った寮生活。
夏、帰省先から戻った同級生たちから、成人式のために実家で
晴れ着の準備をしてもらっている、という話を聞くようになりました。
親と一緒に晴れ着選びに行ったとか、仮縫いにまた帰省するの、だとか・・・。

へえー、そうなんだ・・・?

夏休み、帰省しても、そんな話を一切持ち出さなかった、自分の親のことを
ちらりと思った。

「授業料高くて困るって言ってたし。。。うちでは晴れ着はないんだな」

子供はその辺、案外敏感です。
早い段階から少しづつ、自分に言い聞かせてゆきました。
私には3歳下に妹がいて、彼女がもし進学をするのなら、親はまたそこで
もう一度ため息をつくことは見えていたから。

晴れ着の話題で持ちきりの同級生の輪からは、そっと距離を取り、
気にしないようにしながら、
絵の具だらけのツナギ姿で、また学内を歩き回る。

美術学生の私は、当時、卒業したらアートの世界に生きると決めていました。
人と同じ人生は送りたくない。
制服姿で働くOLになんかなったら、本気で自分に負け、
当時、本気でそう思っていたんです。
(若さって、、、、汗。あはは、すごいでしょ?ww)

そう、人と同じような人生は送りたくない。
20歳の私は、大真面目に本気でそう思っていた。

なのに!なのにですよ。
他の多くの同世代が、まるで当たり前のように手にしている(ふうに当時は見えた)
「晴れ着&成人式システム」が、自分にはやってこないと知った時の、あの感覚。
胸の中の小さなチクチク。。。。

なんだなんだ?この矛盾は?もう自己矛盾の極みです。

で。
けっ!晴れ着なんか欲しくないわ〜。という振りをしました。
欲しがっても手に入らない、と認めるのが嫌だったのかもしれない。
ならば「最初から欲しくない人」になるのが良いと思ったのです。

「手に入らないものは、欲しくないよ」なのか
「欲しくないから、いらない」のか
自分の本当の気持ちももはやわからなくなっていた。
ただずっと、そのチクチクは抜けないの。
いったいどっちだったんでしょうねぇ。。。

そんなねじれた感情については、自分でも全く説明がつかなかったし、
親にも友人にも、一切口に出すことはしなかったんです。

年が明けて、成人の日。
他の同級生のように帰省することもなく、成人式に出るでもなく
いつもと同じように絵の具だらけのツナギ姿で、脚立の上で
絵の具の刷毛を持っていました。

意地になっていたのかも。
徹底して、いつも通りに過ごそうと決めたことは憶えています。

祖母が「せめて成人式に行くための洋服を買いなさい」と言いながら、
お小遣いをくれていました。
年頃の娘のくせに「よそ行き」も持たず、いつもいつも汚い格好をしていた孫娘にね。
(芸術系の学生なんてそんなもんです)

もらうだけもらっておきながら、私は、祖母の言葉に全く従わなかった。
なんと、アパートの引っ越し資金に全額を使いました。
洋服なんか意地でも絶対買わない!
どこまで行っても「ねじれて食えない女子大生」でした。
今思えば、素直に可愛いワンピースでも買って着て、祖母に見せてあげても良かったのにね。
子供だったです・・。

多くの人が持っていても、自分のところにはやってこないものはある。
そして誰でもない。自分がすでに手にしている「自分だけのもの」もある。

一生に一度の成人の日。
健康で、周りからお祝いの場に送り出してもらえて、友達の輪にいられる人。
おめでとうと言ってもらえた人。
今日のその幸せを、今日を叶えてくれた人たちのことを
どうか大事に、忘れないでください。

一方で、

晴れ着をまとわず、いつも通りの姿で、
働く、学ぶ、過ごしている新成人のきみ。
あなたの1日を、どうぞ自分で誇りに思ってください。

ふわふわの襟巻きや晴れ着がなくても、新しいスーツがなくても、
今日からあなたは日本の立派な大人です。

ここまで元気に生きてこられて良かったね。
たくさんの人に出会えて、支えられて良かったね。
そして今日。
あなたの場所で、いつも通り無事に1日を終えられて本当に良かったね。

今日1日の過ごし方は、きっと何十年か後に、必ずあなたを支えているはず。

あの日、汚いツナギで脚立に乗っていた新成人の私は、間違いなく今の私を作りました。
子供っぽく、食えない女子大生だったけど、
あの日の自分の若さと幼さを、今はちょっと愛おしいとも思います。
本当に叶えたい夢も持っていた。
一方で、あの時の親も祖母も、きっと周りの大人たちの側にも、言えない思いが
きっとあったよね。
今私は、もうそっちの世代になったので、想像もつきます。

二十歳のきみへ。

大丈夫。
もし今、何かほろ苦い、切ない思いがあっても、それはいつか必ず
豊かな心の栄養になります。
いつかのその日を楽しみにしていてください。

そして、ともに社会を支える大人の仲間として、あなたを心から歓迎します。

成人の日、おめでとう。
どうぞ堂々、胸を張って生きてください。


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くれはる

by kureharu | 2017-01-09 16:24 | 日々のこと

もっとすこやかに、さらにごきげんに!


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